青さについて

Kiss Mintとカロリーメイトとファイブミニみたいな青春

不思議な夜

何の導きか、店構えのセンスも悪くメニューの写真も大して美味しくなさそうなそのラーメン屋の暖簾をくぐった。

 

カウンターに腰掛け中華そばを注文する。

「お待ちどうさま」と差し出されたその中華そばは学食の醤油ラーメンを彷彿とさせる無個性でコショウをまぶしたくなる味であった。それは別にいい。

 

問題は私に続けて入ってきたカップルである。

 

注文したメニューは彼氏が頼んだものが先に差し出された。

私と同じ中華そばだ。

すると彼氏の右横に座る彼女がわざわざ彼氏の左手に置いてある割り箸を腕を伸ばして取り出し、パキッと割ってから彼氏に「はい」と渡した。

「えっ」と思わず声を出してしまった。

割り箸を割ってから人に渡す行為がマナーとして如何なものなのか正しい判断が下せなかったが、少なくとも私はしたこともされたこともない。

 

そして「先に食べていいよ」だとか「お先に頂きます」だとかの応酬もなしに彼氏がいきなりその中華そばを無言ですすり出した。

彼氏の食事を凝視する彼女。を凝視する自分。

私たちが座るのは横並びのカウンターである。

何なんだこの違和感は。

そして途中で気付いたが何故私だけおしぼりと水が提供されないのか。。

 

ふいに彼氏が「食べる?」とレンゲに乗せたチャーシューを彼女に差し出した。

思わず二度見した。

彼氏はまだチャーシューを食べていない。

私なら麺が欲しい。

「ありがとう〜〜〜〜!」と遠慮なくチャーシューを頬張る彼女。

だんだん怖くなってきた。

不思議の国に迷い込んでしまったかのような感覚。

目を疑う所作が繰り出され続け、私は狼狽の踊り子と化していた。

 

「はい、お待ちどうさま」

彼女が頼んだ親子丼であった。

 

 

とどめだ…そう思った。